ご存知かと思いますが、ただいま、21世紀で最大となる磁気嵐(地磁気変動)が、いま、起きている最中です。日本は現時点で昼間ですが、もし夜だったら日本各地でオーロラが見えているかもしれません。そして、これは大きな災害に繋がる可能性も含んでいます。
(いまのところ、発生していないようですが)
まず地球は大きな磁石(電磁石)であり、地球全体は磁気で覆われています。
(地磁気と言います)
これは日常はあまり変化しません。下のグラフは、一昨日の地磁気の変化の様子です。
(気象庁地磁気観測所のHPより)
https://www.kakioka-jma.go.jp/cgi-bin/plot/plotSetNN.pl
(時刻はUT=世界時。9時間足すと日本時間です)
地磁気の日頃の変化を「日変化」と呼びます。水平成分(H)は50nT以下です。
(なおHは南北成分ではありません。「水平」成分です)
(参照:https://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/element/eleexp-j.html )
そしてこちらが、最新の変動です。
水平成分(H)や全磁力(F)が大きく変化しています。よく見ると、グラフの範囲を超えてしまっていますね。水平成分の変化は500nTを超えていて、日常の地磁気変化に比べると、振幅で10倍以上大きいです。さらに短周期の激しい変化が見られます。
こういった巨大+短周期の地磁気変化が「磁気嵐」(地磁気嵐)と呼ばれる現象です。
今回のような大きな磁気嵐は電力網に予期せぬ大電流を生みます。短周期の地磁気変動が、大地に誘導起電力(誘導電場)を発生します。その結果、高圧送電網に大きな振幅の誘導電流が流れ込むのです。これが、「GIC(Geomagnetic Induced Current」)です。
GICにより、大規模停電が起きる可能性があります。日本ではそのような事例は知られていませんが、アメリカやカナダ、南アフリカなどでは過去に大規模停電に至ったことがあります。日本の送電網に、大電流が流れているのはまず間違いないです。いまのところ、そのために電力供給に障害が起きているようには見えませんが、今後の報告を確認する必要があります。
※GICなどの現象については、少し前にテキストを書きました。
興味のある方は下記を御覧ください。「2.3 地磁気変動とGIC」の一部を執筆しました。
○太陽地球圏環境予測 オープン・テキストブック (PSTEP Open Textbook)」
https://nagoya.repo.nii.ac.jp/search?search_type=2&q=1621213872938
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磁気嵐のときにはオーロラも発生します。そのメカニズムは案外複雑ですが、下記を見てみてください(平成26年度電気設備技術基準関連規格等調査役務請負報告書)
https://obem.jpn.org/files/GIC_000095.pdf
※P.14に図があります。
今回は、ヨーロッパなどで多数報告がなされています。
ヨーロッパは、地磁気変化の激しい現時点で夜だからです。
https://twitter.com/maya_koikeda/status/1789065032178729369
https://twitter.com/ryuhokataoka/status/1789016679386869781
https://twitter.com/ryuhokataoka/status/1789052796442210562
https://twitter.com/shinyahoya/status/1789015341437517827
日本はあいにく昼間であり、オーロラは見えません。
音もしませんし、肌で感じることもありませんが、嵐がいま来ているのです。
しかも「暴風雨」です。
2003年にも大きな磁気嵐が起きましたが(10月末におきたので「ハロウィンイベント」と呼ばれています)、今回はその規模を抜いて、21世紀(ここ24年間)で最大の磁気嵐となると思います。
いまのところ、人工衛星への被害や、大規模停電の報告はなさそうです。先ほど、自宅の外の広めの場所(駐車場)で、GPSの精度をチェックしましたが、誤差3m程度であり、問題はなさそうです(下記:スマホのGPSアプリより)。ただ今後も気がかりではあります。
※なお、現時点で磁気嵐は終わりではなく、まだ大きくなる可能性もあるそうな…
https://twitter.com/ryuhokataoka/status/1789103150999416877